生活保護とパチンコ

兵庫県小野市で「福祉給付制度適正化条例」が制定され(3月27日)、即4月1日から施行された。
本日の新聞各紙はこの件でもちきりだ。
条例では「生活保護法による金銭給付、児童扶養手当法による手当額、その他福祉制度に基づく公的な金銭給付」について、パチンコ、競輪、競馬その他の遊技、遊興、賭博等に費消し、その後の生活の維持、安定向上を図ることができなくなるような事態を招いてはならない」(第3条)としたうえで、「市民および地域社会の構成員は、受給者に係る偽りその他不正な手段による需給に関する疑い又は給付された金銭をパチンコ、競輪、競馬その他の遊技、遊興、賭博等に費消してしまい、その後の生活の維持、安定向上を図ることに支障が生じる状況を常習的に引き起こしていると認めるときは、速やかに市にその情報を提供するものとする。」(第5条第3項)と規定しました。
「密告制度」を自治体が進んで導入するその端緒がここに開かれたわけです。
「監視社会」がこうして現実のものになったということです。
まぎれもなく、生活保護は個人情報であって、それを市民などに通報を求める今度の制度は矛盾(毎日新聞)する訳です。
こうした遊興や奢侈に生活保護費が使われているとの指摘がかなりのものがありますし、現に釈然としないのも本当のところでしょう。
しかしその行為を第三者たる匿名の市民に通報せよというこの条例の精神は、いつか来た道を想起させて怖い。
市民が相互に監視しあい、密告しあう社会を私たちは忌避すべき社会の在り様として理解してきたはずです。
次は飲酒ですか。高価な牛肉ですか。
そうしたものが生活保護受給者にはふさわしくないとする観念が社会に蔓延することを私は恐れる。
これではまるで「二等市民」として扱われる印象(朝日新聞)も現実化しかねない。
私たちはそうした社会を作ってはならない。