ラムサール条約登録

渡良瀬遊水地ラムサール条約登録について
 渡良瀬遊水地ラムサール条約登録に関する住民説明会が去る9月2日(栃木市藤岡文化会館)を皮切りに9月16日(栃木市藤岡遊水池会館)まで栃木市野木町で都合5回開催されている。私は9月10日(土)に栃木市藤岡遊水池会館での説明会に参加した。
 そもそも論は避けるが、今回のラムサール条約湿地潜在候補地として渡良瀬遊水地の名があがったのは平成22年9月30日のことで、ラムサール条約湿地として国際基準を満たすと認められる湿地(潜在候補地)を全国から172カ所選定した中に含まれたということです。
 ラムサール条約は通称で、正式には「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」と称し、条約の目的は「に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地及びそこに生息する動植物の保全と其の適正な利用(ワイズ・ユース)の促進にある。
 条約の採択は1971年2月2日(イラン・ラムサール)で、1973年に発効しています。
○湿地とは、ラムサール条約では(1条1)池、沼、ため池、川、水路、水田、湿原、干潟、遊水地などおよそ水のあるところ全てを湿地としています。
○ワイズ・ユース(賢明な利用)の概念こそこの条約の大事な点で、適正に利用しながら湿地を保全していくという考えにたっている訳で、規制の強化や保全第一主義に立つということはない。
ラムサール条約登録の要件は次の3つ。
①国際的に重要な湿地であること。②国の法律により、将来にわたり自然環境の保全が図られていること。③地元自治体から登録への賛意が得られていること。
①については、9つの基準が設定されているが、水田も含まれるようになったとのことです。
 渡良瀬遊水地は、基準1「生物地理区(日本)を代表する湿原」として、また基準3「本州最大級のヨシを主体とする湿性草地が存在」「河川の氾濫原を主な生育環境とするトネハナヤスリ、タチスミレなどをはじめとする希少種約50種を含む700種以上の豊富な植物種が生育する湿地で、本州以南の低湿地の代表例」とされています。
その他特記事項は「大規模なチュウヒ(鳥類)の越冬地、ツバメのねぐら」とあります。
②では、渡良瀬遊水地は「河川法による規制(これまでと同様)」に加え、「鳥獣保護法に基づき国による鳥獣保護区に指定(わな猟も禁止)」することでこの規定を満たすとのことです。(現在は狩猟は銃猟規制(栃木県条例)だけでわな猟はできる)
③では、正に地元の理解が得られることが大事で、こうして説明会が持たれたということです。
 なお渡良瀬遊水地(3300ha)は長く治水工事が行われてきた訳で、治水工事には登録によって新たな規制は発生しないことが明らかになりました。土地利用には登録によって現在行われている行事や既存施設の利用についての新たな規制は発生しない。しかし、条例湿地の一般的な扱いとして、大規模な水面の創出、大規模に湿地の生態系を損なうようなゴルフ場等の新設はできないとされています。
 環境省の説明では、渡良瀬遊水地を将来どのように利用していくか、それは周辺住民の理解によるとのことです。正に関係住民が考えていく問題だ問うことです。
 環境の整った潜在候補地から順次登録の仕事を進めていくとのことで、次回は2012年(来年)6月のCOP11(ルーマニアブカレスト)において日本はすくなくとも6カ所の登録を目指すそうです。
 渡良瀬遊水地は歴史的にも治水の面でも多くの議論が交錯する地です。私は、議論はしっかりとすすめつつ、治水をすすめ、その上で湿地環境を保全していくことの重要性を認識したいと思います。
ラムサール条約湿地は世界で1952カ所(内日本37カ所)、環境省の話では日本の個所数の少なさはビックリするほどで、生物多様性の件も踏まえると、渡良瀬遊水地の登録をぜひとも前に進めたいものです。
(2011・9・10記)